10 手作りと買い物
学生時代から縫い物が好きだった。人並み以上には手先が器用だったので、家庭科の時間にはよく友人の分まで課題をこなしていた。お気に入りの作品は「エプロンを作ろう」とかいうときに作った、白くて、フリフリで、「どこのメイドが着るのこれ……?」って感じの一品。今も実家のどこかに眠っているに違いない。
それから、数年。出産を間近にひかえ、時間は十分にある。
そんなわけで、つい買ってしまったのである……ミシンを!
もともと、だんなと付き合い始めてからミシンがなくて困ることが多々あった。プレゼントに添えるのに簡単なぬいぐるみを作りたいなと思ったとき。(だんなはかわいいものに目がない。私よりよっぽど。)お弁当箱を入れるちょうどいい袋が見つからず自分で縫おうと決めたとき。パンツのすそがちょっと手縫いじゃ面倒なくらいほつれたとき。
今までは手でチクチクなんとか頑張ってきたけど、ミシンがあればもっとはかどる。それにきっとこぶたのためなら、もっとミシンが使いたくなる事態が増えるに違いない! 自分を思い返してみても、学校に持ってく雑巾一枚だってそうだもの。
置き場所とお金にちょっと勇気はいったけれど、だんなに了解をもらってエイっと買ってしまったら、やっぱりとっても楽しかった。
最初に作ったのは、おくるみ兼ブランケット。100センチ角。柄つきのダブルガーゼと無地のダブルガーゼをあわせて作った。
次にただのブランケット二枚、110×70センチ。これも柄と無地のダブルガーゼをあわせて。引っ掛ける用のループもつけた。
続いてスタイ三枚は、タオル地にダブルガーゼを重ねた。これはミシンよりも手縫いのほうがきれいにできた。
最後に、抱っこ紐(新生児から使えるベビービョルン)用のよだれパッド。ダブルガーゼ生地二枚の間に、タオル地を挟んで。型紙がネット上に見つからなかったので、自分で測って作った(案の定ちょっとキツキツになってしまった)。
(よだれカバーとブランケット2枚)
私が、小学校で習ったことで一番有用だったなあと思うのは、やはりミシンの使い方だ。全く知らなければ、ボビンの巻き方も、糸の通し方も、下糸の引っ張り出し方も、どれも覚えてしまえば難しくはないものの、なんの知識もなければハードルが高すぎると思う。
他に有用だっていうとなんだろう?……べっこう飴の作り方、とか?(小腹がすいたときよくおやつに作って舐めてました。アルミカップに砂糖と水少々をいれフライパンの上へ。爪楊枝でかき混ぜながら、ふつふつ色づいてきたらその爪楊枝を持ち手にして冷やし固める。)
元来、小器用ではあるもののてきとうすぎる性格のせいで、縫い物にしたって到底売り物になるものなんかは作れないのだけど(飽きっぽいし)、自分で使うレベルだったら十分だった。産休に入ってから一カ月くらいのあいだで、一人ぼっちの家でミシンをかたかたいわせながら、てってけてーと作った。
まあしかし、作っただけでは、出産準備は終わらないのである。布団に寝転がりながら、だんなとよく話をした。
「そろそろ、こぶたの買い物いかないとね」
「そうだね。ていうか、何買ったらいいの?」
「肌着とか、タオルとか……あとなんだろ?」
「ベビーカーとかいるの?」
「まだいらないと思うけどよくわかんない……」
この期に及んで、という感じではあるが、産休に入るまで、とうてい赤ん坊のためのものを揃える気にはなれなかった。万が一、もしここで何かあったら、主をなくしたものたちはどうなっちゃうんだろうと思ってしまって。
それはとてもこわい想像だったけれど、あまり遠くないところに確かに存在するのだった。しかももはや、胎児しだい、ではなく、多くの原因が宿主である私に帰せられるような気もするのである。
なるべく、考えないようにしながら、日々をできるかぎり明るく過ごすように心がけていた。
そして、夏の暑すぎる週末に、だんなと二人でアカチャンホンポまで買い物に行った。ほかにも、ネットでいろいろ揃えた。
買ったものは以下のとおり。
短肌着とコンビ肌着のセット5枚。
ワンピースみたいな薄手の洋服2枚。(退院のときに着られるようかわいい柄のにした。)
バスタオル1枚。(我が家にほとんどなかったので。)
抱っこ紐1つ。(ベビービョルン。セール中だったのか、ネットより実店舗のほうが安かった。)
子供服用のハンガー。
ベビーせっけん。(泡で出るタイプ。)
洗濯用せっけん。(ベビー用ではない。家の洗剤ぜんぶ切り替えることにした。)
食器用せっけん。
……どう考えても、いろいろ足りなさすぎるような気もする。おむつとか哺乳瓶とかおしりふきとかベビーカーは合う合わないを考慮して、あえて買ってないのだけれど。
あと、悩んだのが、布団だ。
私とだんなはふだん、畳の部屋にムアツのダブルマットレスを敷いて寝ているのだが、赤ちゃんはどうしたらいいのだろう。母に聞いてみた。
「ねえ、赤ちゃん最初さあ、ベビー布団とかっているのかな?」
「そんなもんいらないわよ。座布団でじゅうぶん。すぐコロコロ転がり出すんだから!」
とは言いつつも、「あ、そうだ、布団ならあるある」と言って母はおもむろに押し入れに向かった。
「ほらこれ! あんたが赤ちゃんのときの!」
……まれにみる力作すぎた! 掛け布団なのだが、おもてにいろんな動物やら、父と母の顔やらが刺繍してあるのだ。しかも、その両親の似ていること。
「なに、これ……すごい!」
「あんたが産まれたとき、母さんの友達が作ってくれたのよ」
はあ、自分のやってたお裁縫なんててんでおままごとレベルだったんだな……と見入ってしまった。
ありがたく頂戴し、汚れていたカバーだけ取り替え、二つ折りで敷き布団にさせていただくことにした。
いつか本来の用途で使えたらいいけど……でもこぶたもさすがに、祖父母の顔刺繍入りの掛け布団ってどうなんだろう? 嫌がる、いや恥ずかしがるかな?
買った服や肌着は、どれもこれも天気のいい日に、しっかり水通しをしてベランダにぱたぱたと干した。あまりに小さくて、ほんとにこんなのにおさまるのかな……と不安になった。でもかわいかった。
そこからしばらく、また袋詰めして部屋の隅に置いてあったのだけれど、ふと疑問になった。
これ、産まれたら、しまわんと、よね?
そう。こぶた用の衣装ケースもしくは洋服ダンスのことをなんにも考えてなかったのだ。慌てて、空きスペースを探したけれど、そんなもんはない。2DKの40平米、家賃きっかり10万のこの部屋にそんな余裕はない。
しかたない。重くなった体をひいこら言わせながら、余分な衣服の断捨離にかかった。そもそも、パンティで一段、ブラジャーで一段、ソックスで一段取ってる私の私物の配分がおかしかったのだ……穴のあいたもの、二年くらい着てないもの、表面より毛玉のほうが多いもの……けっこう捨てた。がんばってさようならした。
捨てながら、断捨離ブログとか着回し術とか節約ワードローブとか見始めてしまって、けっこう、はかどらなかった。
テスト前になると部屋片付けたくなるあれと一緒だな。私十年進歩してないな、と思った。
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